恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜

「ごちそうさまでした」



店長と話が終わった後、食器をキッチンへと持っていき、小さな声でそう言った。

制服を来ていないから中まで入れず顔だけ出すと、それに気付いた木原さんが私の元へと近づいてくる。



「もう帰るの?」

「はい、来週から試験なんで」



まだピーク前でキッチンも暇らしい。

食器を受け取った木原さんは戻る様子も特になく、私は話しを続けることにした。

と言うよりは、言わないといけない。



「この前木原さんが、私の代わりにシフト入ってくれたんですね」

「あぁ。店長に聞いたんだ?」



さっきはそんなこと何も言わなかった。

迷惑をかけたのにあっけらかんとして、まったく気にしていない様子で……。



「ありがとうございます。迷惑かけて本当にすみませんでした」



だから多分、これは私自身のけじめ。

悪く言えば自己満足。

店長が言うところの“責任”というものを、人任せにして身勝手な行動を起こした私が、一番にしないといけないことだと。



「アハハハハッ」



なのに。

木原さんはお腹を抱えて笑いだした。

何かもう、今日はこればっかり。


他のスタッフに軽く注意され、木原さんはシンクに食器を置きにいった。

で、なぜかまた戻ってきて。

ボリュームを下げつつも、目には涙を溜めて笑い続けていた。



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