恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜

「やっぱ、穂積さんってくそ真面目だなー」



第一声がそれで、そんなことは……と手を振る。


ズル休みしたんです。

仮病だったんです。


本当のことを言うと軽蔑されるに違いない。

だけど、言わずにはいられなくなった。

か細く発した声は、何とか聞きとれるぐらいじゃないだろうか。



「すみません、少し抜けていいっすか?」



他のキッチンスタッフにそう言った木原さんは、手招きしてスタッフルームへと歩いていく。

その背中を追い掛けながら、



「仕事、いいんですか?」



問い掛けると、



「少しなら大丈夫。それに今は、店長も煙草吸いに行ってるだろうし。な?」



木原さんの言うように、スタッフルームには誰もいなかった。

ドカンッとソファーに腰を降ろした木原さんは、



「やっぱくそ真面目だよ、穂積さん。そんなの言わなきゃ分かんないのにさ」



って言って笑いだした。

目の前に立ち尽くす。


あの……。
怒るとこじゃなくて、笑うとこですか?



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