恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜

「いつものことなんだよ」



それを聞いたのは、学食を出て大学の本館という建物内を歩いている時だった。

講義の終わりを告げるチャイムが鳴って、学生がまばらに教室から出てきている。

辺りは少し騒ついて、後ろを歩く二人の声が聞こえなくなって、ハル君は教えてくれた。



「亘はいつもあんな調子でな。っとに、紗夜香にまで迷惑かけてごめんな」

「先生が謝ることないし!!」



そう言った私の顔を見て、少し照れ臭そうに顔をかく。



「ここでは……名前で呼んで」

「えっ!?」

「先生とか呼ばれるとこっ恥ずかしくてさ」



ここでは家庭教師の先生じゃなくて、大学生のハル君だからって。

先生とか呼ばれていると、さすがに恥ずかしいらしい。

勝手だよなってあどけなく笑うハル君に、胸がキュンとなる。



「じゃ、じゃあ……ハル、君」



あれ?

何で何で?

久々に面と向かって名前を呼んだら、妙に新鮮な気持ちになった。


何でだろう。

少し気恥ずかしい。



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