恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
「あれ〜っ? どうしたの紗夜香ちゃん」
いつの間にか近くにいた望さんが、不思議そうに声をかけてきた。
「な、何でもないです。ちょっと暑いかなーって思って」
パタパタとわざとらしく手であおぐ。
ハル君はその理由に気づくよね。
隣に顔向けできない。
「教室入れば寒いぐらい冷房効いてるし、ちょっと中入ってみようか!!」
「えっ、でも」
「いいって! さっきこの教室から教授も出てきたし、次の講義始まるまで五分はあるしね」
半ば強引に手を掴まれて、教室の扉の前に来た。
扉が開かれる。
その向こうには、テレビで見たことがあるような光景が広がっていた。
「どう? 高校とは全然違うでしょ?」
高校の教室五つ分の広さはありそうな教室。
三人がけの椅子に長机が階段状に六列に並んでいる。
一番後ろなんて、少し顔を上げなければ見えないほど。
「あの……部外者が入っても大丈夫なんですか? それに、心なしか見られている気もするんですけど」
見渡して、視線に気づいて、ちょっと怖気づく。
「大丈夫だよ〜。多分、誰が入ってきても見る人は見るんだよね。
それに、大学って自分でカリキュラム組めるから、高校と違っていつも同じ人たちで講義するわけじゃないんだ。
ほら、一人で座っている人も結構いるでしょ?」