恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜

「ハルは分かっていたから。私の心の中に亘がいたことを」

「それって」

「好き、だったんだよね。別れてもずっと、忘れられなかったんだよね」



ペットボトルを手にとって喉を潤して、三人の過去の話を続けていく。



「私たちって一年の時からよく三人でいたんだけど。ハルと付き合いだしてからは、亘とはお互いに目も合わさないようになって。
……つらかったなぁ〜」

「望さん……」

「何度も思ったよ。ハルのこと本当に好きになれたら、どんなに幸せかって」



どこかで聞いたことのある言葉に眉をしかめる。

そうだ。

……私が、颯平に抱いているものと似ているんだ。


好きに“なれたら”


そう、好きになれたらどんなに幸せなことなんだろう。



「だけどダメね、そう思っている時点で好きになんてなれない。なれないから、なれたらって思うわけだし。
人の心なんて理屈じゃないから。まったく、何であんな奴好きなんだろうね〜」



憎まれ口を叩きながらも頬を緩ませて笑顔を見せる望さんが、とても可愛らしいと思った。

それと同時に、自分の心に問いただす。


好きになれないから、好きになりたい。

だから、颯平のこと好きになりたいと思うのかな。

私の好きな人は……。


そう考えた時に脳裏に浮かぶのは、ハル君の顔。

答えは出ていた――……。



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