恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
軽く振りほどいた手は再び捕まれる。
「誰待ってんのー? 女? じゃあ丁度いいじゃん!」
あまりのしつこさに、思わず顔をしかめる。
何が丁度いいだ、意味分からないし。
私は顔を上げて二人の顔を見た。
すると、その後ろに。見間違いじゃなければ……。
「悪いけど、こいつに触らないでくれる?」
「はぁ? 何言って……」
二人の男をさらに上から見下ろす、私のよく知っている人。
笑顔なのにどこか笑ってなくて威圧的で、普通の声のトーンなのにどこか刺があって。
「行くよ、紗夜香」
私の手をその男から奪うと、有無を言わさずその場から離れていった。
何も言葉が出なかった。
頼もしく見えるその背中に見とれてしまう。
繋がれた手をギュッと握り締めたくなりながら、ただついていく。
「成長したじゃん」
声がして顔を上げれば、陽の光に照らされるハル君の笑顔。
私はそれを、目を細めて眺める。
「初めて会った時はついていって、俺に散々言われたよなー」
懐かしむようなハル君の言葉に、どこか淋しさを覚える。
できることなら
あの日に戻りたい。
もう一度、もっと、ハル君と過ごしたい。