恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
一瞬、ハル君は驚いた表情を見せた。
「あっ……えっと」
言葉に詰まって、慌てて顔を取り繕う。
きっと、深刻な顔をしていたに違いない。
可愛く「寂しいよ〜」とか言ったら良かったのに。
つい出てしまった本音に、今更どうしようもなくて為す術が見つからない。
すると、そんな私に向かってスッと手が伸びてきた。
そっと髪に触れて優しく撫でる。
まるで、壊れ物でも扱うかのように。
視線が絡まって、ありえないぐらい心臓がうるさく鳴り響く。
「そっか。紗夜香はいい子だな」
私の好きなハル君の柔らかい笑顔、心に響く優しい声。
そんな雰囲気に後押しされて、静かに口を開く。
「ハルく……って。もうっ!! 髪ボサボサになっちゃったじゃん!」
「ハハッ、ごめんごめん」
さっきまでの雰囲気は一変。
髪を思いっきりぐちゃぐちゃにされ、膨れっ面になりながら手ぐしで髪を整える。
横目で盗み見るハルくんが楽しそうに笑っていて、ちょっとだけホッとした。
ハル君への気持ち……。
伝えたいのか
伝えたくないのか。
答えの出ない自分にため息が漏れる。
ユラユラ揺れる狭い観覧車の中で、手を伸ばせばすぐにでも届く距離。
だけど、縮まらない距離。
そして、踏み出せない一歩。