恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
見上げたハル君の顔が一段と眩しく見え、視界が茜色にユラユラと揺れる。
「どうした?」
それが涙のせいだと気付いたのは、目の前にハル君の顔が近付いてきたから。
「んー、何か目に入ったみたい」
「大丈夫? ちょっと見せて」
「っ、平気平気っ!!」
慌てて涙を拭って一歩後ずさると、ハル君は笑いを零した。
ちょっとふくれっ面になりながら先にエントランスに向かって歩き出し、涙がもう流れないように空を見上げる。
一面茜色に染まった空が風に吹かれてユラユラと、その情景を変えていく。
無言でさえも居心地がいいハル君の隣で、静かに穏やかに心に風が吹く。
「私ね、理学部に進もうと思うんだ」
振り返りハル君を見据えて笑みを浮かべる。
「ハルくんのおかげだよ。ここで初めて会った時のままの私だったら、こんな進路は考えさえしなかった。ハル君がいたから……ハル君と会えたから、だから。
ありがとう、ハル君」
挫折を味わって自暴自棄になった私を光の差す方向へ導いてくれて、苦しいけれどとても温かいこの気持ちを与えてくれた。
出会わなければよかった、なんて思えない。
本当に出会えてよかった。
いろいろな感情が体の中を駆け巡り、堪えていたはずの涙がポタリと地面へと落下する。