恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜

やっぱハル君はずるいよ。

いなくなるのに、そうやっていとも簡単に私の心を奪っていく。


望さんが教えてくれたことは本当だった。

ハル君は卒業も向こうでして、その後の仕事も向こうで探すつもりだと、教えてくれた。

語学に興味があるからって。



「最後の生徒が、紗夜香みたいな子で本当によかった。
バカ正直でくそ真面目で」

「ちょっ、ハル君ひどくない?」



もっと一緒にいたかったのに。

手を伸ばしたら届く距離にいたかったのに。



「けど、いつも素直で一生懸命で。危なっかしくて放っておけないって思ってたんだよな」



そう言って、ハル君は少し屈んで私の目線に合わせてきた。

風でなびく前髪から見え隠れする瞳に、胸の鼓動が次第に早さを増してくる。


ハル君――……。

どうしようもなく、好きです。



「なのに、いつの間にか成長して、俺も負けていられないなって思った。
将来の夢、俺はまだ見つけていないから、向こうで頑張って見つけてこようと思う。

もう会う機会はないかもしれないけれど、紗夜香のこと応援してるから。何かあれば、いつでも連絡しておいで」



たくさん迷惑かけて、心配してくれて。

時には本気で怒ったり、一緒に喜んでくれたり。


五つも下の、ただの家庭教師の生徒の私と、本気で向き合って接してくれた。


きっと……。

この遊園地での出会いがなかったとしても、私はハル君に惹かれていた。



「ハル君、私……、ハル君のことが」



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