恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
『ピンポンピンポンピンポーン』
真っ暗な視界が徐々に明るさを取り戻す。
「……んっ、誰よ。うるさいな」
カーペットの上で子機を大事に握り締めて、いつの間にか寝ていた私。
子機を手から離して目を擦り、悪戯かと思うほどしつこく鳴らすチャイムに嫌気が差しながらけだるい体を起こす。
今日は朝からいろいろありすぎて、精神的疲労が激しいみたい。
受験失敗。
ナンパ男。
暴言。
ジェットコースター。
矛盾。
生きる意味。
あーっ、駄目だ。
考えれば考えるほど頭が痛くなってくる。
フラフラとした足取りで玄関へと向かい、覗き穴から人影を確認する。
「っ!! 颯平!」
勢い良くドアを開けると、学ラン姿の颯平が目の前に立っていた。
「よっ。紗夜香、今から時間ある?」
「う、うん」
今日の出来事に少し後ろめたさを感じているせいなのか、少し声が上ずってしまう。
会えて嬉しいとか、そんな感情は芽生えもせず。
何だか憂欝な気持ちを抱いたまま、戸締まりをして颯平と一緒に出かけていった。