恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
西に傾いた日に白い雲がかかり、涼しさは一層増していく。
鳥のさえずりが聞こえ、穏やかな風が辺り一面に吹き、蕾をつけた桜の枝が揺れ動く。
行き着いた先は家から徒歩五分の距離にある、定番とも言えるブランコと滑り台と砂場しかない小さな公園。
学校帰りによく寄り道をした、思い出の詰まった場所だった。
「座ろうか?」
颯平は足を思いっきり曲げてブランコに座り、私も同じように腰を下ろす。
ギーギーッと音を立てながら、小さくブランコを揺らしていく。
「できたーっ!」
「すごーい。おっきー!!」
声のする砂場では無邪気にはしゃぐ小さな子どもたちの姿があった。
笑顔でとても楽しそうで、悩みなんかなさそうな様子が羨ましくも感じる。
「いいなぁ」
私は颯平に気付かれないぐらい小さく呟いていた。
あの頃はよかった。
勉強とか受験とか、そんなことを考えることもなかったし。
ただ毎日、何も考えずに楽しく過ごしていればいい。
子どもってだけで得だ。
その時はそんなことにも気付かないのに。