恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
「じゃあ、また連絡するから」
「うん。今日はありがとね」
休みの間の予定を立てながら、颯平は家の前まで送ってくれた。
夕焼けが颯平を紅く染め、長く黒い影を作る。
そんな後ろ姿を名残惜しくも見送り、私は家へと戻っていった。
ドアの横にある小さな小窓から漏れる白い明かり。
微かに聞こえる物音。
鍵穴をガチャっと鳴らしてそーっとドアを開けると、奥から人影が出てきた。
「おかえり」
私が颯平と出かけている間にパートから帰ってきていたお母さんが、朗らかな笑顔を向けて出迎えてくれた。
今まで軽くなっていた気分は一転。
私は鉛を背負ったかのように重い空気を纏いだす。
「ごめんなさい……。私、落ちちゃった」
あれだけ受かるって強きな発言をして、滑り止めさえ受けないって言っていたのに。
実際は万が一を考えてって、無理矢理私立を一校受験させられたけど。
公立受験に失敗した今。
一番合わせる顔がない人だった。