恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
私が落ちた高校をそんなにもあっさり切り捨ててこの高校に来ただなんて、香里奈の行動は私からすれば理解し難い。
今まで周りにいなかったタイプ。
「何で笑うの?」
「あっ、ごめんごめんっ」
私が何で笑っているのかはまったく分かっていない様子で、だけどそれ以上食い下がる事もせずあっさり引き下がってホッと肩を撫で下ろす。
「で、話は戻るんだけど。この高校で将来有望そうな男を物色しつつ、いい大学に入って御曹司探そうかなって。やっぱジュニアが一番無難よね? 起業する人もいいんだけど、安定するまでは安心できないし」
「凄いね……」
と言う外なかった。
“社長夫人”だなんて非現実的なことを、この勢いの香里奈ならやってのけそう。
それだけ鬼気迫るものがあった。
「そう言う紗夜香は夢ないの?」
揺れ動く電車がスピードを上げて激しく振動する。
不意に顔を覗かれて、言葉に詰まる。
痛いところを突かれてしまった。
「……ん。まだ分かんない」
私の夢って?
小さい頃は“保育士”とか“スチュワーデス”とか、もっと言えば“お花屋さん”だとか、とにかく女の子が憧れる職業を言っていた気がする。
だけど年を重ねるにつれて思うのは、所詮それは子どもの夢であって夢ではない。
本当になりたいのかと聞かれれば、それは何か違うと思う。