恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
これはもしかしなくても、もしかして。
テーブルの上に乗せていた右手を、颯平の目の前まで伸ばしてプラプラーとしてみせる。
ついでに顔色を伺っていたら、それはもう分かりやすいぐらい面白い反応を見せてくれた。
やっぱり颯平は颯平だ。
ハッとした表情をして私の右手を凝視し、思い出したかのように急いで左手を自分の足元に引っ込める。
茹でダコのように顔を真っ赤に染め、バツが悪そうに明後日の方向に視線をずらす。
私たちキス止まりだし。
それ以上手を出されたことなんてないし。
「はぁ、格好悪ぃ。こっそり手を繋ごうと思っただけ、だから」
視線も合わさずにぶっきらぼうに言って、耳まで真っ赤に染めていく。
……あぁ、そうだった。
私は颯平のそんな姿を見て、付き合うことを決めたんだっけ。
サッカー部だった颯平と、バレー部だった私。
たまたま部活が終わった時間が一緒だったあの日。
みんなで一緒に帰っていたんだけど、偶然にも最後の二人になった。
それまであまり接点もなかった颯平とは、何も話がなくて気まずい空気だけが流れていた。
なのに、私の家の近くのあの公園の前で、それはもう何の前触れもなく突然告白してきたんだっけ。