恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
言っていることは一理ある、だけど。
ジワジワと近づく体。
今目の前にいる男からは、優しさのかけらも感じられない。
調子のいい喋りだし、締まりのない顔をしてるし。
もちろん、私のことなんか微塵も心配していないはず。
ただ遊びたいだけ?
そう思うと握られた手首にじんわりと汗が滲んでくる。
反対の手で再び零れ落ちそうな涙を拭い、未だ気持ち悪いぐらい顔をニヤつかせるその男から目を逸らす。
すると腕をぐいっと強く引っ張られ、その場に無理矢理立ち上がらせられた。
驚いて再びその男に視線を戻すと、やっぱり笑みを浮かべていて、だんだんと抵抗する気も失せてくる。
……もういい。
私なんか。
フッと手の力を抜くと、その男はここぞとばかりに肩に手を回して抱き寄せる。
一瞬ビクッと反応してしまった私なんてお構いなし。
横でペラペラと一人で喋りながら、エントランス方面へ向かうその男。
もちろん何を言っているかなんて興味もなくて、私はただ俯いて、その男の進むままに連れていかれた。