恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
「やーっと、目合わせてくれた」
スルリとネクタイが落ちて、ハル君の体が離れる。
目をパチパチさせて、私はハル君を見上げたまま。
「何赤くなっちゃってんの?」
「……えっ?」
「ククッ。やっぱ男慣れしていないし。なぁ、紗夜香?」
体がビクンと反応する。
名前を呼ばれただけだよ?
なのにどうして、こんなにも頬が熱くなっていくんだろう。
「それにしてもこんな偶然があるとはな。名前を聞いてまさかとは思ったけど。んー、約一ヶ月ぶり……って、おい。さっきから人の話聞いてないだろ?」
気付けば目の前にハル君の顔がドアップで、驚いて叫び声を上げそうになったんだけど、
「ふぅ……、危ねーな」
口元をハル君の大きな手で塞がれて、声さえ出なかったものの驚きは最高潮に達した。
「叫ぶなよ?」
小刻みに何度も頷く。
眼鏡の奥のハル君の目が細くなり、手が口元から離れて顔が遠ざかっていく。
はぁー。
うなだれるように大きくため息をついた。
何だか一気にドッと疲れた。
やっぱり、
ハル君はハル君だ。
部屋に入ってからのハル君は、すっかりあの日に戻っていた。
それにしても。