恋いトビ。〜Teacher,teach me ?〜
「ハル君って二重人格」
「ん? 何が?」
「だって、お母さんといる時は誠実そうな人だったのに。話し方だって違ったし。
だから、もしかしたらハル君じゃないかもって思ったりもしたのにさ」
テーブルの上にプリントや問題集を広げはじめたハル君は、目を大きく開いて私を見るとプッと吹き出した。
そのまま笑いは止まらず。
笑われた理由が分からない私は、何だか悔しくなって仕方がない。
これじゃあ、あの日と同じじゃない。
「何で笑うのよー」
「ククッ。何で、って言われてもな」
「もうっ! 教えてよ?」
これじゃあ、また気になることが増えるだけじゃん。
「ほら、いいから座れ」
そう言われて、相変わらず逆らうことができずに向かい合わせで座った私。
ヒラリと数枚のプリントを手渡されて、その中身を確認する。
「これ……」
「小テストだよ。明日テストなんだろ? N高の過去のテストを参考に作ってきたから。とりあえず苦手な理系科目から今から45分でやってみて。話はその後な?」
ご丁寧にストップウォッチまで用意していて、ハル君は私に話す暇さえ与えずにスタートボタンを押した。
「じゃあ、俺はまだ手続き等が残っているから、親御さんとこに行ってくるから。
しっかり頑張れよ?」
部屋から出て行くハル君を眺めた後、膨大な量の問題に目を通し、慌てて机の上に筆記用具を取りに行って問題を解き始めた。