LOVE PRINCESS(壱&沙耶)
ホントのキモチ
「……沙耶ちゃん」
「ん? 壱人君、なぁに?」
「いや……やっぱり、いいや」
無理だ。
やっぱり誘えねぇ。
沙耶ちゃんを何の戸惑いもなく“彼女”と呼ぶのに慣れてきた頃。
俺は重大なことに気が付いた。
いや、正確には気付かされた。そう言った方が正しいのかもしれないけど。
今更過ぎて誰に相談することも出来ないくらいに、本当に今更なんだけど。
実は。
沙耶ちゃんとデートしたことが、1度もない……。
旅行も行ったし、遊びにも行ったし。
出かける事は色々とあったんだけど。
ただ2人で。っていうのが1度もない。
しかも、それに気付いたのは天然の林で。
その林に言われて初めて気が付くなんて……何とも情けない話だ。
よくよく思い出せば。
確か沙耶ちゃんに誘われた事が2回位? あったように思う。
だけど生徒会の用事なんかが入ってて、断ったんだよな。
それ以来、沙耶ちゃんからも誘って来なかったから、俺も忘れてた……っていうのは言い訳で。
そんなこと、全く頭に浮かばなかったっていうか。
沙耶ちゃんは俺の妹、かおりの友達。
だから俺が誘わなくても家に2~3日に1回は来る。
それを当たり前だと思っていた俺は、今まで考えた事すらなかったんだよな。