LOVE PRINCESS(壱&沙耶)



「えっ。いいの?」


少し頬を赤くした沙耶ちゃんに、にっこりと頷いてみせる。


「やったーっ!」


パアーッと顔を明るくさせ、チケットを手に取り見つめている沙耶ちゃんを見て思った。


これくらいの事で、こんなにも喜んでくれるなら、さっき誘っておけば良かったな、って。


どうやら、俺は臆病な男だったらしい。

相手を振り向かせる為に、自分から仕掛けるのは良いけど。

振り向いてくれている相手に、自分から行動するのは苦手。

もし嫌だったら。頭が先に動いて行動に移せなくなってしまう。


だから今回のデートも、そう。

このままじゃ沙耶ちゃんが俺に愛想をつかしてしまうんじゃないか。
そんな風に考え込んでしまった。


今まで本当に大切なものが手に入った事のない俺には、正直……沙耶ちゃんが恐い。


チケットを握りながら楽しそうに笑ってる沙耶ちゃんを、ソファの上から眺めて


「あっ……、いつ行く?」


少し遠慮しながら聞くのは、沙耶ちゃんの予定を優先したいから。


「明日とかは?」

「え? 明日!?」


そう驚いた俺に、


「あ、ごめんね。
さすがに急過ぎるよね!
私はいつでもいいよ、壱人君の都合の良い日で」


そう早口で言う。


あぁ、俺はまた沙耶ちゃんに気を遣わせちゃったのかな。


「ううん、大丈夫だよ。
じゃあ明日にしよう?」


微笑むと沙耶ちゃんは、満面の笑みで『明日、何着ようかな?』そう喜んでくれた。



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