LOVE PRINCESS(壱&沙耶)
沙耶ちゃんは常に俺の顔色を見ている、んだと思う。
たまに鋭く突っ込んでくる時もあるくせに、その時以外は常に俺に気を遣ってるんだ。
理由は何となくわかってるんだけど。
どうすれば、それが理解してもらえるのかがわからない。
沙耶ちゃんは多分。
心ちゃんを好きだった俺、に気を遣ってる。
でも俺が心ちゃんに惹かれたのは、今まで誰も気付いてくれなかった“俺”って人間を見てくれたからで。
それが恋愛としての好きだったのか、そう聞かれると曖昧だけど。
ただ、川合と幸せそうにしている心ちゃんを見ると俺も嬉しいし。
ただ、川合のせいで泣いている心ちゃんを見ると助けたくなる。
だけど、そこには沙耶ちゃんと居る時みたいな胸の痛みなんかはない。
ムカムカしたり、イライラしたり、ドキッとしたり。
そんな風に胸が騒がしくなるのは……沙耶ちゃんだけなのに。
「壱人君、大丈夫?」
「え?」
「……疲れてない?」
俺の顔を覗き込み、少し心配そうな顔でジュースを差し出す沙耶ちゃんが居た。
「あ、大丈夫だよ?」
「そか……」
そう呟くと、沙耶ちゃんは俺の隣に座った。