LOVE PRINCESS(壱&沙耶)
どんより曇り空は、さっきよりも暗くなった気がする。
こんな天気だからか、遊園地は休日のわりに空いてる方で。
今まで何を乗るにも待ち時間は少なかった。
それなのに観覧車だけは、何故か長蛇の列だった。
その最後尾に並んだ俺達の間には、会話がない。
さっき、沙耶ちゃんの言いかけた言葉に何か意味があったのかもしれない。
そうは思いながらも、何となく話しづらい雰囲気に黙っていた。
「はい、次の方どうぞー」
間の抜けた店員の声に、俺達は観覧車へと乗り込んだ。
ゆっくりとあがっていく景色を遠目に見ながらも、俺は目の前に座る沙耶ちゃんが気になって仕方ない。
下を向いたまま、動きもせず。
何かを考えているようで。
その姿が妙に俺の心臓の鼓動を速くさせる。
「……沙耶ちゃん?」
不安に負けそうになった俺が、少し腰をあげた瞬間……
「動かないでっ!」
叫びにも似た声が沙耶ちゃんから飛んできた。