君と、秘密の神隠し
サボっちゃおうかな・・・。
なんて思った時だった。
『・・・か』
「え・・・?」
小さな、本当に小さな声が鼓膜を震わせた。
それは、咲きかけの蕾が、開花するかのように、あたしの頭に飛び散った。
美しい赤色の花弁が、目の前を美しく舞っていくような、優しい声。
時間もぎりぎりで、もちろん生徒も誰もいない。
後ろも前も見てみたけど、人っ子一人いない。
いないはずなのに・・・、
『リリカ』
今度ははっきり、私の名前を呼んだのだ。
姿も見えない誰かの声が。
その声が聞こえた瞬間、胸が締め付けられるような思いだった。
走っている時とは違う、息苦しさ。
どうしてだろう。
行かなくちゃ、と思ってしまう。
『君が選ばれた。早く私の元へ』
ドクンッと、大きく胸が脈打った。
選ばれた・・・?
何を言っているの・・・?
その声の主が言っている意味がまったくわからなくて、戸惑う。