自称彼氏と自傷彼女。


「嘘、だよね?」

「ふふ、うん、嘘。」

「な、んだ。びっくりした。」

「でもね、音色のお兄ちゃんは俺のお兄ちゃん。」


どういう事?


「?」

「音色のお母さんは俺のお父さんと結婚してる。それで俺を産んだ。お分かり?」


ああ、納得…。


「で、でも、名前は?」

「名前?音色のお兄ちゃんの名前は千景でしょ?」


…お兄ちゃんの名前間違えたなんて一生の後悔。


ごめんなさいいいい!助けに来てくれたのに…!会って謝りたい!


「お兄ちゃんに会いたい?」

「うん!」

「もう大学生でさー、本当不器用なんだけど優しいよ。音色の事も、いつも話してた。“大学卒業したら迎えに行く”って。」


そこであたしの何かがプチッと切れた。


我慢出来なくてでてきた涙が、千里の手で拭われる。



温かい。千里、ありがとう。


“職員室に。”って言葉も忘れて、千里に出会った水道で手の傷を洗うのも忘れて、千里に抱かれて泣いた。


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