キミのとなり。
第一章
HRが終わる方が早かったか、この時を待っていたかの様に教室のドアが開いた。
「ヒロシ!」
名前を呼ばれて顔を上げると、ミキがヒロシの方を見てニッコリ笑っていた。
そして、そのままヒロシの視線を窓の外へと誘導した。…雪だ!
「初雪だよ!早くスノボ行きたいねー。」
ミキがさらに満面の笑みを惜しみなく向けてくる。
「そうだな。」
ヒロシは笑顔でそう答えたが、内心はとても複雑な気分だった。

ヒロシとミキは幼稚園の頃からの幼なじみである。
家が近所なため、小・中と同じ学校に通い、そして気がついたら、高校もなぜか同じ学校に通っていた。そんな仲である。
二人は違うクラスであったが、ミキは毎日のようにヒロシの教室に顔を出すことが多かった。そういったミキの行動は高校に入ってからずっと変わらないのだが、最近特に、何か様子が違っていた。ヒロシはその何かがずっと気になっていた。

「ミキっ!また、こっちのクラスにいたのね。先生呼んでるよ!」
ミキの一番の親友、ユウコが息を切らしてヒロシの教室にやってきた。
「えっうそ、なんだろ…。ゴメン、すぐ行くー!」
ミキはヒロシの方を見て、チロッと舌を出してみせた。
「ヒロシ、また来るね!今日、一緒に帰ろ!」
ヒロシは慌ただしくうちの教室を出ていくミキの姿を見送った。

「ミキちゃんかわいいよなー」
背後にいたヤベがボソッと言う。
それを聞いて、ヒロシは首を横に傾げた。幼い頃から一緒にいたせいか、見慣れ過ぎてしまっていたためか、ヒロシは、そう言われてもどうもしっくりこない。
「お前ら付き合ってるのか?」
“きた!このセリフ、何度聞いたことか…。”
ヒロシは心の中でため息をつく。
「まさか!だってアイツ付き合ってる奴いるじゃん。部活の先輩だっけ?」
ヤベはそれを聞いてずいぶん驚いている様子だった。
「なんだ、お前知らなかったのか?それ、とっくの昔に終わった話だぞ。」
「えっ…」
「お前ら、一緒にいるわりにお互いのこと話さないのな。」

ヒロシは軽くショックを受けていた。キツネにつままれた気分である。
「お前、ミキちゃんのこと好きなんだろ?」
「へっ!?ただの幼なじみだよ。」
ヒロシは迷いなく、そう答えた。
「あっそ。じゃあ、そのスノボデート、俺も誘ってくれよ!」
そう言ってヤベは去っていった。
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