キミのとなり。

親友

とある放課後、教室の片隅で作戦会議が開かれていた。
「ヤベくん、どう思うよ?二人のこと」
ミキの友人、ユウコだ。
横で“うーむ”と唸りながら腕組みをしてるのは、ヒロシの友人、ヤベである。
「いやー、どうしたもこうしたも…今さらっちゃー今さらな気もするけど、そろそろくっついてもいいんじゃね?あの二人。」
“あの二人”とは、ミキとヒロシのことである。
「ミキもね、薄々わかってはいるみたいなんだけどね。“もし付き合ったら、別れることになるかもしれない”のがイヤなんだってさ」
「なんだそりゃ…ヒロシに“ミキちゃんと付き合っちゃえよ”って言ったら、“今さら”なんだとさ。」
二人とも“うーむ”と考え込んでしまった。少しの沈黙のあと、口火を切ったのはユウコだった。
「あの二人、今の状況が楽だから、その状態につけ込んでるのよね…今の二人に足りないのはズバリ、ジェラス!!嫉妬!!独占欲!!だわ!!」
ユウコは演歌調に拳を振り上げ、鼻息荒く立ち上がった。
「一肌脱ぎますか!」
二人は顔を見合わせ、ニヤリと不気味に笑った。


友人らが作戦会議をしていることなどつゆ知らず、当の本人たちは例のスノボの話になっていた。
「ヒロシー、スノボいつ行こうか?」
相変わらずミキは満面の笑みを向けてくるのだが、ヒロシは違和感が気になってしょうがなかった。
「んー、そうだなぁ…」
半分、空返事である。
「ヒロシ?なんか変だよ?」
思わず“お前こそ”と言いそうになるのをヒロシはグッとこらえた。
「そういやぁ…もし行くんならヤベが誘えって言ってたよ。」
それを聞いたミキがポンッと手を叩いた。
「そっか、じゃあユウコも誘ってみようかな!」
ヒロシの心中とはウラハラに無邪気な様子のミキであった。


ヒロシはヤベに“二人の雰囲気が重い”と言われてから、ずっとそのことを考えていた。

あいつは俺とのこれからの関係、どうしていきたいんだろうか。
このまま友達のままでも全然かまわないんだが、でも、これから先もこの関係は可能なのか?
もし俺に彼女ができたとして、今のミキとの関係は続くのか?
普通に考えて、彼女からしたら、きっとイヤなんだろうなぁ。
そして、ミキの相手できなくなってミキもグレて…うわ、ソレ面倒くせぇ…
じゃあ、もし、ミキが彼女なら?……どうなるんだ?
…ミキが彼女?ん?…いや、ミキはミキだよ。
というか、もし付き合ったとしても、今の関係となんか変わるのか?
いや、それ以前にミキは俺のことどう思ってんだ?
嫌い…ではないだろう、さすがに。
じゃなきゃ、こんなに一緒にいねぇしな。
ミキの“友達”と“男”の境界線のどの辺に俺は今いるんだろうか…

ヒロシの思考回路はぐるぐる回っていた。
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