ワケあり!
「森村…学校のデータが不明扱いにされてるぞ」

 何かの装置をいじり続ける島村が、ぼそりと言った。

 絹の行動や情報から、彼も調べてみる気になったのだろうか。

「それは、ありえないな…あの渡部の息子でさえ、一般情報だからな」

 ボスの否定に、島村がぴらりと印刷した紙を出す。

 それを受け取ったボスの目が、だんだん中央に寄ってきて。

「な、生意気な! 私の弟の分際で!」

 ビリリッ。

 絹が見る前に、紙は破られてしまった。

 まあ、見たところで、情報が伏せられていると書いてあるくらいだろうが。

「ありえない……どこから圧力がかかったんだ」

 更に紙を細かくちぎりながら、ボスは不満たらたらだった。

 兄である自分が一般扱いだったのに――どうも、不満の根っこはそのあたりのようだ。

「渡部は、表側に出る立場だから、情報開示しても問題がないはずなんだがな…」

 ボスは、さかんに眉間にシワを集めている。

「母親の血筋に、何かあるんではないですか?」

 島村の冷静な言葉に、一瞬ボスは立ち止まった。

 彼の母が、誰か知っているのだろうか。

「もりむら…もり…もり…青柳の分家筋だったか…あの辺の血筋は、ごちゃごちゃしてて、覚える気がない」

 ボスが投げ出そうとした言葉は、絹のアンテナに引っかかった。

「青柳!?」

 望月と青柳――渡部が並べた、二つの名字。

 絹は、即座に食いついた。

 そうだ。

 ボスも、調べる気はなくても、一応そっち方向の血筋なのだ。

「青柳って、織田一派において、どんな役割の一族なんですか?」

 絹の質問に、ボスが一度唇を閉じた。

「ばかばかしく、つまらない一族だ」

 彼は、まったく価値を感じていないようだ。

 そんな言葉で、一蹴しようとする。

「お前に話すと、すぐ別の意味で首をつっこみそうだから…教えない」

 ツーン。

 出た。

 ボスの、必殺技。

 これをやられると、絹はもう先に進めなくなる。

 んー。

 せっかく見つけた手がかりも、ボスの野望の前ではゴミ屑扱いになってしまった。
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