ワケあり!
 結局、予鈴に邪魔されて、ゴージャス天野から大した情報を聞き出すことはできなかった。

 頻繁に彼女に会うのも不自然だし、ボスもいやがるだろうから、またお節介に現われたところを聞くしかないだろう。

 と、その前に。

 五人が来るのだが。

 部活に行く途中なので、将と一緒の時だ。

「高坂さん…ちょっといいかしら?」

 昼休み、見事にゴージャス天野に邪魔されたせいで短気になったのか、将がいても気にせず声をかけてきた。

「いえ…よくないです」

 立ちふさがる、悪のおねぇさまズに、絹ははっきりと拒絶を表した。

 瞬間的に、相手の顔が引きつる。

「何事?」

 将が、耳打ちしてくる。

 迫力のある美女五人のお出迎えに、驚いているようだ。

「渡部って人の取り巻き」

 さっとそれだけ答えると、「おー」と将がまじまじと彼女らの顔を見る。

「五人もかぁ」

 妙に感慨深げだ。

 つくづく、平和な頭にできているようだ。

 そんな女性たちに、なぜ絹が呼び出しをかけられているのか、考えて欲しいものだ。

「そんなにお手間は取らせなくてよ…ちょっとあちらでお話しない?」

 ぴっきぴきにこめかみを引きつらせてそんな事を言われて、誰がついていくと思うのだろうか。

 ゴージャス天野とのやりとりを、既に見ているというのに。

「お話はありません、お断りします…いこ、将くん」

 絹が、取り付く島を見せるはずがない。

 まだ五人を眺めている将の腕を取り、彼女らをすり抜けようとする。

 その前を――身体でふさがれた。

「ごめんなさいね…どうしてもお話ししたいの」

 ふふふと微笑まれて、絹は視線を横に流す。

 さて、どうしたものか、と。

「ねぇ…」

 そこへ、将が口を開く。

 そうだ。

 彼と一緒だったのだ。

 ここまであからさまな妨害をされれば、将だって黙っているはずがない。

「五人の中の、誰が渡部さんの彼女なの?」

 そこか。

 お前が、気になっているところは、そこなのか!

 絹は、ひっくり返りそうになった。

 だが。

 その言葉は――五人の仲に、亀裂を入れたのだ。
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