ワケあり!
 ゴージャス天野に再会するのは――意外に早かった。

 翌日の昼休み。

 最近、1階に降りると騒ぎが起こるので、絹は慎重だった。

「お、高坂さん」

 本日は、ゴージャス天野。

 マシな方か。

「こんにちは」

 絹は、反射的にキョロキョロした。

 例の五人が、また出てくるのではないかと思ったのだ。

「あ、せやな…外いこ」

 すぐに気づいたらしく、彼女に促される。

 いや。

 あなたと一緒にいる必要も、ないんですが。

「きーぬちゃ……げっ、アマ!」

 しかし、校舎から出るより先に、背後からかけられたお軽い声が裏返った。

「あいた、お山の大将がひっかかってもた…はよ出よ、高坂さん。孕まされんで」

 振り返るなり、ゴージャス天野も、お嬢様にあるまじき言葉で応戦。

 そのまま、絹の背中を押す。

「待て、アマ…なんで、お前が絹ちゃんと?」

「あんたには関係あらへん…この子は、うちの妹分や…なれなれしゅ呼ばんといて」

 猛烈な速度で歩く天野に押される絹も、足を高回転させる。

 それでも、後方の男がひきはがせないということは、ついてきているということだ。

 しかも、いつの間にか妹分にされている。

 おそらく、渡部の攻撃をかわす防弾幕にするつもりなのだろう。

 根っからのお節介のようだ。

 まさかな方角から、対渡部ストッパーが現われた、ということだろうか。

 校舎から押し出されたところで、ようやく足を止めたゴージャス天野が振り返る。

「いい加減、気に入らん娘、つぶすような真似やめい。どうせ、あんたになびかんかったとか、そんなとこやろ?」

 あんた、いっつもそうや。

 ビッシィィ!

 指を突きつけ、決め付けポーズ。

 オーラがゴージャスなだけに、迫力はものすごいものがある。

「アマ…お前が絡むと、いつもややこしいことになるんだよな。絹ちゃん…こいつ、トラブルメーカーだぞ。関わらない方がいい」

 歩くトラブルメーカー、渡部のセリフとは思えない。

「あんたに言われとない」

 うーん。

 二人の対決を見ながら、絹は今日も抜け出してもバレない気がしてきた。
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