ワケあり!
 二度と森村に、祇園祭の話はすまい。

 自室に戻った絹は、それを心に決める。

 そして、不謹慎ではあるが、彼が渡部と言わず、織田そのものをぶっ壊してくれることを、願わずにはいられなかった。

 しかし、そのえげつない話のおかげで、桜の秘密に一つ近づいた気がした。

 彼女は、おそらく遺伝子コーディネートで生まれた、デキのいい子だ。

 絹はベッドに腰掛け、大きく息をついて脳を活性化させた。

 最初から望月という家に生まれたのか、はたまた養子に入ったかまでは分からない。

 しかし、これで渡部が、なぜ望月か青柳という名字を並べたのか、納得がいくのだ。

 そして、桜は誰かの嫁になるか、次世代の自分を作る道具になるはずだった。

 だが、チョウと恋に落ち、駈け落ち同然(?)で、結婚したのだ。

 更に、妄想を膨らませるなら。

 彼女を連れ戻そうとする、織田側の人間に追い回され、カーチェイスの果てに事故。

 遺体を何に使うかは知らないが、織田側が引き取って――ジ・エンド。

 遺伝子コーディネーターという青柳の肩書きを考えると、ただ静かに埋葬、とは思えなかった。

 ここにいられなくなったら、探偵にでもなろうかな。

 気分の悪くなる話を、絹は違う考えで塗りこめてしまいたかった。

 軽い、現実逃避だ。

 しかし、こんな推理を、京や将には絶対できそうになかった。
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