ワケあり!

Present from Pluto

 忌まわしい祇園事件が、ボスの説明で一段落すると、絹は頭を切り替えた。

 再び、ボスの要求通り、広井ブラザーズの相手に専念することにしたのだ。

 ボスも誕生会に参加する気満々で、気象衛星のチェックから、京へのプレゼントまで、抜かりはないようである。

 絹も、そろそろプレゼントを選ばないといけないだろう。

 金持ちだからなあ。

 絹は、頭が痛かった。

 何を買っても、安っぽくなってしまいそうだ。

「島村さん、誕生日にもらってうれしいものは?」

 ちょっと、アンケートをしてみる。

「政府転覆のニュース」

 超真顔だ。

 聞いた私が、バカでございました。

「ハハハ、島村くん。そういうのは、自分でやってこそ価値があるのだよ」

 君の野望も、まだまだだな。

 違う方向に、ボスがたしなめる。

「すみま…っ」

 ガンッ。

 異音に、絹がはっと顔を向けると、島村がソファの角あたりで脚を抑えていた。

 この間ほどひどくはないが、まだ少しぼーっとしているようだ。

「島村さん、変じゃないですか? やっぱり」

 本人を目の前にして、絹は聞いてみた。

 このマッドサイエンティストの助手が、あちこちアザを作っているのは、どういうことか。

「変な薬でも試しました?」

 自分をも、実験材料にしかねない彼らだ。

「あぁ、それなら…」

 ボスが、心当たりがあるように人差し指を立てた。

 お。

 しばしの間に、ボスは真理に行き着いたのか。

「先生…」

 しかし。

 即座の、島村の牽制に――上司は、軽く両手をホールドアップさせた。

「分かった分かった…島村くんは、薬のやりすぎでぼーっとしてるだけだ」

 わざとらしくも、とんでもない言葉で、ボスはフォローする。

 嘘だと、丸バレではないか。

 まあ、ボスの様子からすると、そんなに深刻な内容ではなさそうだ。

 京へのプレゼントに対する悩みと、どっちが重いだろうか。

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