ワケあり!
 蝋燭を、二人で吹き消すという茶番の後。

 食事とプレゼントが、動き始めた。

 忘れていたわけではない――が再び。

 絹も、もらう立場だったのだ。

 ケーキが切り分けられている中、最初に飛んできたのは了だった。

「誕生日、おめでとう、絹さんー」

 ぎゅうっと、首にかじりつかれる。

 一緒に散歩した時についただろう、夏草の匂いがした。

「はい、これプレゼント!」

 可愛らしい包みを渡される。

「ありがとうー」

 軽く抱き返した。

 今は、この了の軽さがありがたい。

 自然に受け取れる。

 次に将。

「気に入るといいけど」

 照れながら差し出す、小さい包み。

「お前ら、オレに大きなつづらばっか、持ってくんな。邪魔くせーだろうが」

 隣で、京がぼやいている。

 ヘリコプターのラジコンだと言っていた了の、大きな箱に続き、将のもかさばるサイズだ。

 チョウが、立ち上がった。

 うわ。

 さすがに、絹は身構えた。

 大御所から、プレゼントが来るとは。

「はい、絹さん…お誕生日、おめでとう」

 やはり、小さな包み。

「あ、ありがとうございます」

 妙に緊張してしまう。

 兄弟にはない、大人のオーラのせいか。

「親父…」

 京は、引きつっていた。

「おめでとう、京」

 チョウから息子に贈ったプレゼントも――大きなつづらだった。

 さすがの絹も、くすくす笑い出さずにはいられない。

 そんな中。

 ボスが。

 立ち上がった。

 あ。

 絹は、これだけは完全に忘れていた。

 ボスが、京へのプレゼントを準備しているのは、知っている。

 だが――自分がもらうかも知れない可能性は、完全に除外していたのだ。
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