ワケあり!
 一面の、星空。

 絹は、柔らかい草の上に寝転がって、夜空を見上げていた。

 ボスが、また天体望遠鏡を持ってきてくれているが、それを覗き込むパワーが、いまはなかった。

 ただこうして、重力に任せるまま空を見るので精一杯。

「ワイルドな観測だな」

 もらいたての天体望遠鏡を抱えた京が、それを近くに据えた。

「いや、自然で疲れない見方だよ」

 将は、先に絹の側にきていた。

 絹が放棄したボス特製の天体望遠鏡を、彼に好きなだけ見ていいと言ったのだ。

 将が宣言したとおり、あの停電騒ぎによく似た夜空だ。

 ただ、やはりわずかに下界の光があるのか、怖いほどには感じなかった。

「了くんは?」

 了が、出遅れるのは珍しい。

「ああ、向こうで先生に望遠鏡をねだってたな…多分、そろそろ親父にハタかれて、こっちに来るだろ」

 京の容赦ない読みに、絹は仰向けのまま笑った。

 光景が浮かびそうだ。

「了の誕生日…遠いからなあ」

 将が、うーんとうなる。

「前の誕生日の分として欲しい~…って、どんだけ厚かましいんだ、うちの末っ子は」

 通りすがりに聞こえただろう言葉を、京が変な口真似で言うものだから、将も巻き込んで一緒に笑った。
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