ワケあり!
「パパにぶたれたー……いたーい」

 そこへ、案の定―― 一発もらった末っ子が登場したため、今度は京も入れて三人で笑う。

「え? なに? なんなの?」

 了が暗がりの中で、きょろきょろとしているようだ。

 声が、右に左に飛ぶカンジで分かる。

「了くんも、一緒に転がらない? いい望遠鏡はなくても、星はきれいよ」

 スネさせないように、絹はやわらかく呼んだ。

 特製望遠鏡を自分のものにした京と、絹から権利を借り受けた将がいるので、それに気づかれるとなおふくれそうだった。

「あ、うんうんー」

 しかし、素直な末っ子は、呼ばれるままに絹の横にゴロン。

 広井家のおぼっちゃま達は、父親の教育のおかげか、ひ弱で潔癖症な感じはない。

 だから草の上とは言え、ほいほい地面に寝そべられるのだ。

「絹さん、頭痛くない? 腕まくらしたげよっか」

 るんるん。

 絹と一緒に寝転がることが、楽しくてしょうがないのだろう。

 上機嫌な了の言葉に。

「100年はえぇぞ、チビ」

「いたっ、京兄ぃ! 頭! そこ頭だって!」

 長男のツッコミは、容赦なかった。
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