ワケあり!
 あれは――どういう意味なんだろう。

 観測会が終わり、ペンションに戻った頃には、既に真夜中だった。

「おやすみ」

 ばいばいと、三兄弟に手を振って、自室に入る。

 鍵をかけ、ふーっと一息。

 疲れた。

 今日の絹は、本当に疲れていた。

 ベッドに、ぱふっとうつぶせに倒れながら。

 しかし。

 絹は、プレゼントの山を見ていた。

 青い包みが、ボスからのプレゼント。

 のろのろと身体を起こして、それを手に取った。

 ベッドに座り込み、膝の上に置く。

 軽い。

 ぺりぺりと、包みをはがす。

 何も考えず、頭を空っぽにしながら、四角い箱を開けた。

 写真だ――さそり座の。

 いや、よく見ると写真ではなく、星がまたたいている。

 本物の、夜空を切り取ったような、ムービーフォト、とでも言った方がいいか。

 また、こんなところに、最先端技術を無駄遣いしている。

 くすっと笑いながら、絹は枕元にそれを置いた。

「島村さんに、作らせたんだろうな」

 なんとなく、そんな気配がする。

 あれ。

 絹は、さそり座をじっとみた。

 本物の夜空のように、少しずつ動いているのとは別の、違う気配を感じる。

 しかし、それが何か分からない。

 ただの星座なのに。

 見れば見るほど、懐かしさが込み上げてくる。

 何度見ても、やっぱりさそり座。

 角度を変えても、薄目で見ても、ただの星座。

 でもどうして、こんなに胸が詰まるのか。

 じわじわと、込み上げてくるのか。

 原因は、分からない。

 分からないまま――絹は、泣いた。
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