ワケあり!
朝一でシャワーを浴び、絹は身仕度を整えた。
枕元に伏せてある、問題のさそり座を、見ないように箱に戻す。
一体、何を仕掛けているのか。
玉葱の成分でも、出ているに違いない。
迂闊にじっと見ると、じわじわくるのだ。
絶対、変な実験の副産物だと決め付け、絹はプレゼント類をまとめて、一つの紙袋にしまった。
京のプレゼントは、一つとしてこれには入らないだろう。
コンコン。
随分、朝早くにノックだ。
「はい?」
鍵を開けにドアに近づく。
「おはよ、起きてるなら散歩に行かないかい?」
あらら。
声の主は、将。
二人を出し抜いてくるとは、なかなかやるな。
確かに、彼が一番朝に強そうな気がする。
「はい、すぐ行くわ」
気分を変えたかったので、ちょうどよかった。
一人は気楽だが、余計なことを考えるには向かない。
邪魔するものがないだけに、際限なく沈んでいくからだ。
「おはよう」
鏡で最終チェックして、部屋を出る。
「おはようっ」
嬉しさでいっぱいなのが、気配で分かる。
「よかった…もう起きてて」
行こう、と手を取られる。
了とは別の意味で、テンションが高い。
「おはようございますー」
ペンションのオーナーに、すれちがいざまに挨拶をして、外に出る。
ひんやりした、気持ちのいい空気だ。
「絹さん、夏休みもまた一緒にどこか行かない? 天文部の観測会もあるけど、それとは別に、さ」
手を引きながら、将が肩ごしに振り返る。
「そうね、また誘って」
にっこり微笑みながら、絹が答えると、彼は前を向き直る。
「…二人で、どこか出かけたいなーなんて」
ぼそっ。
将が、付け足したそれが耳に入った瞬間。
「きゃっ」
絹はつまずいた――ふりをした。
「だ、大丈夫? 絹さん」
「あは、ごめんね、大丈夫よ…何か言った?」
将の腕を支えに態勢を整えながら、絹は彼を見上げる。
「あ、いや…別に」
将は、言葉をひっこめた。
あぶない、あぶない。
京さん、あなたの弟は、意外と油断なりませんよ。
枕元に伏せてある、問題のさそり座を、見ないように箱に戻す。
一体、何を仕掛けているのか。
玉葱の成分でも、出ているに違いない。
迂闊にじっと見ると、じわじわくるのだ。
絶対、変な実験の副産物だと決め付け、絹はプレゼント類をまとめて、一つの紙袋にしまった。
京のプレゼントは、一つとしてこれには入らないだろう。
コンコン。
随分、朝早くにノックだ。
「はい?」
鍵を開けにドアに近づく。
「おはよ、起きてるなら散歩に行かないかい?」
あらら。
声の主は、将。
二人を出し抜いてくるとは、なかなかやるな。
確かに、彼が一番朝に強そうな気がする。
「はい、すぐ行くわ」
気分を変えたかったので、ちょうどよかった。
一人は気楽だが、余計なことを考えるには向かない。
邪魔するものがないだけに、際限なく沈んでいくからだ。
「おはよう」
鏡で最終チェックして、部屋を出る。
「おはようっ」
嬉しさでいっぱいなのが、気配で分かる。
「よかった…もう起きてて」
行こう、と手を取られる。
了とは別の意味で、テンションが高い。
「おはようございますー」
ペンションのオーナーに、すれちがいざまに挨拶をして、外に出る。
ひんやりした、気持ちのいい空気だ。
「絹さん、夏休みもまた一緒にどこか行かない? 天文部の観測会もあるけど、それとは別に、さ」
手を引きながら、将が肩ごしに振り返る。
「そうね、また誘って」
にっこり微笑みながら、絹が答えると、彼は前を向き直る。
「…二人で、どこか出かけたいなーなんて」
ぼそっ。
将が、付け足したそれが耳に入った瞬間。
「きゃっ」
絹はつまずいた――ふりをした。
「だ、大丈夫? 絹さん」
「あは、ごめんね、大丈夫よ…何か言った?」
将の腕を支えに態勢を整えながら、絹は彼を見上げる。
「あ、いや…別に」
将は、言葉をひっこめた。
あぶない、あぶない。
京さん、あなたの弟は、意外と油断なりませんよ。