ワケあり!
 さーて。

 絹には、もうひとつ課題があった。

 織田のことに比べると、大したことはないのだが。

 携帯の番号やメアドが変わったことを、三兄弟に上手に伝えなければならないのである。

 下二人はいいとして――京が厄介そうだ。

 登校の車の中。

「えっ、メアドかえちゃったの?」

 予想通りの了の反応に、絹は苦笑しながら自分の携帯を差し出した。

「ちょっと、都合で」

 曖昧にごまかして、この話題を終わろうとする。

「三日前…」

 助手席が。

 ぼそりと呟いた。

 三日前?

 絹が、言葉を把握するより早く。

「三日前…先生が夜中に、うちにきた。二日前…お前が風邪で休んだ」

 京は、言葉を続けた。

「そして今日…携帯を変えました、か」

 問い詰める口調ではない。

 ただ、匂わせている。

 この3つに、関連性があるんじゃないのか、と。

「先生が、夜中って…」

 絹が知らないのは、その最初のひとつ。

 三日前と言えば、拉致された日だ。

 京都についていたか、運搬中だったかは知らないが、その日の夜中、ボスが広井家を訪ねている。

 チョウに会うためだろう。

 でも。

 なぜ。

「え、そうだったんだ」

 夜中が何時か分からないが、将が驚いた声をあげる。

 彼は、気づいていなかったようだ。

「京兄ぃ、夜更かしだしなぁ」

 聞くだけで眠そうに、了があくびをした。

「何の用だったのかしら」

 京は、知っているのだろうか。

 席の後姿では、表情がよくわからない。

「さぁな…」

 絹に心当たりがないことが、逆に京を不思議がらせているようだった。
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