ワケあり!
 ワイルドな長男、元気な次男。そして、可愛い三男。

 これでようやく絹は、兄弟全部と対面できた。

 そして、手応えも感じていたのだ。

 ボスの読み通り、この顔にしたのは正解だった。

 たいした労力も必要なく、簡単に釣り上がるのだから。

「口は悪いけど、いいアニキなんだ、許してやって」

 京のことを、弟が詫びる。

 仲のいい兄弟なのは、車での雰囲気で分かっていた。

 それに、京のガラの悪さも、おぼっちゃまの範囲をはみ出しそこねている。

 本物の恫喝は、あんなもんじゃない。

 浮かぼうとする記憶を、絹は再び深くに押し込めた。

 将を振り返る。

「私がお邪魔してたんですもの、気にしないで」

 教室に入って、仲良く話しながら席についた。

 この光景を、クラスメートはどう見ているのか。

 同じ車から降りたのを、見た人もいるだろう。

 誤解なら、大歓迎だ。

 そうすれば、変な男も寄ってこないだろう。

 絹の手間も省けるし、将相手の仕事もやりやすい。

 もう少し、この顔に慣れるまで、邪魔は欲しくなかった。

 綺麗な子の悩みなど、想像でしか分からないのだから。

 だが。

 誤解が広まるより先に――変な男の方が、先にやってきてしまった。
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