ワケあり!
 宿題は、了が最初に飽き始め、ついにグダグダになってしまった。

 居間なら、絹と一緒にいられると学習したらしく、自慢の物をあれやこれやともってくる了。

 それに付き合っている間に、すっかり夕方だ。

「あ! パパの車の音!」

 耳聡く、了が反応する。

「今日は早かったな」

 将は、ソファから立ち上がった。

 絹も立つ。

 ボスお待ちかねのチョウだし、お礼も言わなければならないので、玄関まで行くつもりだった。

「出迎えなら、僕も行く!」

 了が、絹を見てついてこようとした――が。

「お前は、ここの片付けが先だ。何でも持ってきすぎだろ」

 しかし、将に叱られて置いてけぼりになる。

 苦笑しながら、廊下へ出た。

「おかえりなさいませ」

「ああ、ただいま」

 既に、チョウは玄関に到達していると分かる声。

「おかえり、父さん」

 こっちへ向かってくるチョウに、将が片手を上げる。

「お邪魔してます」

 絹は、自分に視線が飛ぶ前に慌てて頭を下げた。

 顔を上げると。

「ああ、絹さん、よく来たね。自分のうちだと思って気楽にして」

 嬉しそうに、チョウはにこにこしている。

 社交辞令というより、何だか本当に嬉しそうだ。

「本当に、お手数かけます」

 自分の家のようにと言われても、正直困る。

 ボスの家ですら、そういう意味では違うのだから。

「ホント固くならないで…今日は絹さんの歓迎会で、ごちそうを頼んでおいたからね」

 さあ、夕食にしよう。

 にこにこチョウに、いざなわれる。

 歓迎会。

 聞いていない事実に、正直困った。

 本当に絹は、厄介なものをしょいこんでいるのに。

「気にしなくていいよ、何か理由をつけてみんなで騒ぎたいだけなんだから、父さんは」

 将にまた、空気を読まれフォローされる。

 ますます、絹は困ってしまいそうだった。
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