ワケあり!
「よろしくお願いします」

 三人が、それぞれの部署に行ってしまい、絹は社長室に残された。

 秘書なるものが、どんなものか想像つかないが、とりあえずやってみよう。

「まあまあ、そう固くならずに…まずは、各部署の見回りから行こうか」

 大きな手が、ぽんぽんと絹の肩を叩く。

「北さん、業務バインダーを出してあげて」

 社長室を出て、チョウは秘書に指示を出す。

「はい、こちらです」

 差し出されるバインダーを受け取る。

「これから回る部署の様子を、観察してそれに書き込むのが、最初の絹さんの仕事…オケ?」

「はい、わかりました」

 絹に、一体どんな観察を求めているのかは分からない。

 まさか、良品部の査定ではないだろうから、思うままにやってみよう。

 そう言えば、良品部で少し気になるところがある。

 エレベータへ向かいながら、絹は聞いてみることにした。

「あの、良品部について伺ったのですが、何も作成しない部署は、何もないのですか?」

 素朴な疑問だ。

 たとえば、さっきの秘書たちや、総務部なんかはカヤの外なのだろうか。

「あはは…目のつけどころがいいね、大丈夫、ちゃんとあるよ」

 エレベータが開き、チョウが乗り込む。

 絹も慌てて続いた。
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