ワケあり!
「他の部署は、自分が一番良いと思う部署を応援させるんだ。これは個人別だね」

 二階、と言われて、絹はボタンを押した。

「それって…賭けみたいな感じですか?」

 思いつくのが、その言葉しかなかった。

「ぶっちゃければそうだね…でも、他部署も参加することで、皆が社内の製品や開発に敏感になる」

 ふらふらと応援する部署を変えるのは、最初だけらしい。

 そのうち、ごひいきが出来て、ひとつの部署を応援しはじめる。

 飲み会にも呼ばれるし、遅くまで頑張っていれば差し入れもする。

「連帯感を大事にしているんですね」

 二階につく。

 エレベータが開く。

 絹は「開」を押して、チョウが降りるのを待った。

「私にとって、居心地のいい会社でなければ、イヤなだけだよ」

 ワガママなオジサンでね、私は。

 振り返って、にこりとチョウが笑う。

 人と、上手につながって生きていきたい人。

 それが、少しうらやましい気がするのは――絹が、変わりつつあるせいだろうか。
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