ワケあり!
「個人に販売するのは、危険だからな…最終的には、政府とか自治体とか、他国が商売相手になりそうだぞ」

 再び、マウスをカチカチ鳴らしながら、京は壮大な話を言い出す。

「政府…ああ、そうね。一般人が使い放題だと、気温を下げすぎちゃうわね」

 国単位の話になってきた。

 ボスの科学力が、世界のためになろうとしている。

 今頃、聞いている本人も、苦笑していることだろう。

 さすがは、健康的な広井家の発想だ。

「産業スパイも動いてるらしいから、とりあえず構造だけ来週公表するそうだ…大騒ぎになるぞ」

 先に発表しておかないと、盗まれてからじゃ遅いからな。

 どんどん、話が進んでいる。

 もう一度、京の手が止まった。

「本当に、先生の名前を出さなくてもいいのか…聞いといてくれ」

 手柄を全部、広井がもらうことに引っかかりを覚えている声。

 絹は、にこっと笑って――ダーメ、と指で×を作って見せたのだった。
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