ワケあり!
 朝、アキとトレーニングをし、アルバイトへ行く。

 それを繰り返していた数日後。

 朝。

「あの写真は、何かあるのですか?」

 身体をほぐしている絹に、アキが聞いた。

 絹が、さそり座のフォトフレームを、いつも倒しているせいだ。

 最初の二回は、アキが起こしていたようだが、その後はもう倒したままにしてくれて。

 不思議だったのだろう。

 家から持ってくるほど大事なものなのに、倒したままというのは。

「あれは…その…」

 絹がいいよどむと。

「すみません、立ち入ったことを聞いたようですね」

 すっと、アキが言葉を引いた。

 星のフォトフレームだったので、そんなに重い意味を持たないものだと思っていたのだろう。

 彼女なりの、軽い話題。

「いえ、いいんです…誕生日のプレゼントにもらったものなんですが…見るたびに、何だか泣けてしまうので」

 絹は、苦笑でごまかした。

「誕生日…ああ、あの時の」

 アキの頭の中で、何かつながったようだ。

「坊ちゃま方も、張り切ってましたからね…よく覚えています」

 誕生会は、この家ではしていない。

 彼女が言っているのは、その前段階の話だろう。

 そういえば、三兄弟のプレゼントは、なかなか曲者だった。

 いや、将はいい。

 彼がくれたのは、シルバーのネックレスだ。

 問題は。

 京は、ピアス。

 あのー、ピアスホールないんですが。

 これは、ピアスのできる耳になれ、ということだろうか。

 逆に言えば、もらったピアスをはめられる状態になれば、京の思いを受け入れたと判断するぞ、と言われている気がした。

 了は、ピンキーリング。

 単なるファッションリングなのは、よく分かっている。

 分かっているが――指輪だ。

 おかげで、将からもらったネックレスも、つけづらくなってしまった。

 将のネックレスはできて、他のはどうしてダメなんだと思われそうで。

 うーん。

「では…始めましょうか」

 にこり。

 話題がそれたことを満足したように、アキは腰を落として構えた。
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