ワケあり!
 完璧につながった――という感覚とは、少し違う。

 島村が、天野の兄説のことだ。

 あの歩くゴージャスと、余りに似ていない。

 似ていない兄弟など沢山いるのだから、それだけで決められるわけではない――それは、分かる。

 関わりがあるのは、あの写真からも間違いないだろう。

 ただ、蒲生はいったのだ。

 島村の過去をたどっていくと、『二人』の人間に行き当たると。

 絹は、天野の兄ではない方の人間も、ちゃんと彼に聞いたのだ。

 もう一人は、絹の知らない人間だった。

 三度の自殺未遂の後――病院から謎の失踪をした男。

 大卒ではあったが、科学者ではない。

 ああもう。

 考えていても始まらないし、本人に聞いたところで教えてもくれない。

 そして、この件については、渡部とボスのことにはおそらく無関係だろう。

 だから、後回しだ。

 永遠に、後回しかもしれないことでもあった。

 もし、島村が本当に天野女史の兄であったとしても、だからそれがどうだというのだ。

 本人の意思でボスの元にいるのだから、人の勝手ではないか。

 絹はそう割り切ったのである。

 その割り切りを待っていたかのように、ドアがノックされた。

「はい?」

 はっと、意識を広井家用に戻す。

 でないと、怖い顔を見せることになりそうなのだ。

「失礼します」

 ドアを開けたのは、アキだった。

 絹は、ほっと息をつく。
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