ワケあり!
 カメラで、予告はしていた。

 一度、帰ると。

 このカメラのいいところは、あくまでも一方向からしか情報が伝達できないことだ。

 もし、カメラに返事ができたなら、おそらく島村につれなく「来るな」と言われたことだろう。

 携帯をかけてまで、禁止にはならなかったことだけが救いだ。

 三兄弟を会社に送っていった車が帰ってきた後、絹とアキは家へと向かい始めた。

 今日は、会社は休ませてもらったのだ。

 家の用事で、アキをガードに借りると言ったら、とりあえず三兄弟は異を唱えなかった。

 それだけ、アキの腕に信頼があるということか。

 久しぶりの、家の玄関。

 彼女に付き添われ、絹はドアに手をかけた。

 開いている。

 いや、玄関が絹の手を覚えているだけだ。

 この家の三人には、自動でちゃんと開くようになっている。

 ただし、決まりごとがあった。

 もしも、誰かに開けさせられるような、何らかの緊急事態が起きたなら――左手で開けろ、と。

 中に入るまでもなく、島村が立っているのが見えた。

 アキが、一瞬意識を緊張させたのが分かる。

 ボスと絹は見たことがあるが、もう一人いるとは知らなかったのだろう。

「ただいま、島村さん」

 そんな彼女の警戒を解くために、絹は穏やかな声を出した。

「…居間で話そう」

 ふいっと。

 アキに挨拶もせず、島村は居間へと消えてゆく。

 勿論、アキ抜きでしか話せないことだ。

「すみません、車で待っていただけますか? 家の中は安全だと思いますし、もし何かあったら叫びますから」

 絹の言葉に、彼女はすっと身体を引いた。

「少し長くなると思います」

 絹のこの声はきっと、居間にまで届いているだろう。

 きちんと話をつけるまで、帰る気がないということだ。

 アキが扉を閉ざしてから、絹はふーっと大きく深呼吸をする。

 一歩目を踏み出す。

 これが、仲間への一歩となるのか、それとも別のものなのか――まだ、分からなかった。
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