ワケあり!
「ねえねえ、歓迎観測会、いいって言われた?」

 車中。

 絹の隣を、独り占めしている了に聞かれる。

「はい、みなさんのおかげです…」

 にこり。

「やったー! 夜も一緒だーっ」

 はしゃぐ了。

「よかった」

 安堵する将。

「……」

 沈黙のままの京。

 昨日、ようやくヘッドホンを外したボスに、一応聞いてみた。

「愚問だな」

 やっぱり。

 しかし、問題はその後だった。

「観測会か…演出として、流れ星が欲しいな」

 ボスは、真面目に考え込んでいた。

 いや、いりませんから。

 流れ星演出のために、どこかの星を壊しそうなボスを、さすがに絹は恐れたのだ。

 くすっ。

 だから、つい思い出し笑いをしてしまった。

「えっ、なになに? いまの思い出し笑いでしょ!」

 何思い出したの?

 可愛い顔して、意外と鋭い了につっこまれる。

 私のボスで、あなたたちを狙ってる男ですよ――なんて、言うわけにはいかない。

 しかし、少しは彼らに言葉として聞かせたかった。

「昨日…観測会のことを聞いた時、保護者が喜んだのを思い出しただけです」

 いつか、直に会うこともあるだろう。

 その時に、いい印象を与えたかったのだ。

「保護者って…おとーさんとかじゃないの?」

 やっぱり、鋭いちびっこだ。

「あ…それは…」

 だが、絹の口から、言わなくてもいい。

 言い淀むだけで、十分だ。

「了」

 一言、しっかりした音が、末っ子を呼ぶ。

 助手席からだ。

 絹の事情を知る、ワイルドな騎士さま。

「人には事情があるんだ…詮索するな」

 まあ、恐い。

 了は、すっかり小さくなってしまった。

「ご、ごめんね、絹さん」

 へこんでしまった、了の手を取る。

「大丈夫よ…気にしないで」

 鞭の次は――飴でないと。
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