ワケあり!
Ver.森村3


 あら。

 ひょこひょこ。

 しかも、増える。

「おねーちゃん…だぁれ?」

 無邪気な目が、珍しいもののように絹を見上げてくる。

「お客さまだよ…あいさつをしなさい」

 静かな静かな、声。

 子供らには、それがまっすぐに耳に入るらしい。

「こんにちはー」

 ぴょこっと、素直に頭を下げる。

「中の方に行ってなさい、すぐにゆくから」

 彼は、子供らを寺の方へと促す。

「はーい」

 はしゃぎながら、はねながら、ちびっこたちは奥へと駆け出した。

「……」

 そしてまた、沈黙。

 あの子たちの、説明はしないんだ。

 くすっと、絹は笑った。

 あの中に。

 もしかしたら、森村の子供がいるのかもしれない。

 行く当てのない、青柳の子供たちなのかも。

 とりあえず、森村は自分なりに、生きる意味を手に入れたのだろう。

 それが、幸せなのか償いなのか弔いなのかは──分からないが。

「お邪魔したわ…」

 帰ろうと、絹は別れの挨拶を言いかけた。

「いや…」

 ようやく、彼女のために唇を開いてくれる。

 それに、少し嬉しくなって。

「そのうち、また顔を出してもいい?」

 言ってみたら。

 少しの沈黙の後。

「……ああ」

 と、答えてくれた。


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