ワケあり!
Ver.島村1


「はい」

 絹は、包みを彼に手渡した。

 居間で、ちょうど一人ぼーっとしていたので、そこを彼女が捕まえたのだ。

「なんだ?」

 うろんな目で、包みと絹を見比べる目。

「プレゼントよ」

 きっぱり。

 絹は、はっきりと言い切った。

「はぁ?」

 ますます、目がうろんになっていく。

 それもそうだ。

 プレゼントをもらう言われなどない──そう思っているのだろう。

「だって、誕生日でしょ」

 もう一度、きっぱり。

 瞬間。

 目じりが、ぴくっと反応した。

 分かっている。

 分かっていて、絹は言っているのだ。

 彼は、二つの命の複合体。

 身体と心が別の生き物。

 どっちでもあり、どっちでもない、「自分」を確定できない人生を送っている。

 その複雑な糸を、絹はあえて解こうとはしなかった。

 単純に。

 いま、彼の記憶と人格を構築している方の、誕生日を取っただけだ。

「誕生日じゃない」

 ずいっと。

 包みを突っ返された。

 むっとした顔だが、絹だってむっとした。
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