ワケあり!
Ver.島村2


「いい加減にしなさいよ。もう、どこでも歩けるようになったのに、いつまで引きこもってんの」

 絹のストレートパンチに。

「お前は、自分が陽の下を歩けるようになったから、日陰の人間を哀れんでいるだけだ」

 容赦ないジャブの応酬。

「オレが日陰にいたいんだ、構うな」

 痛烈な、アッパーカット。

 むかむかむか。

「哀れんでなんかいないわよ…日陰になんかいたくないくせに!」

 絹は、更に包みを突っ返す。

「日陰にいた方が楽なだけでしょ!」

 瞬間。

 彼は──言葉を失った。

 フルヒットした、手ごたえ。

 人の傷口を抉っている自分を、絹は強く踏みしめた。

 たった一歩。

 あと一歩踏み出せば、そこに太陽はあるのに。
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