ワケあり!
Ver.島村3


 呆然とした彼の手にある包みを、絹は上から引きちぎった。

 とても、人にあげたものの扱いではない。

 白い、シャツ。

 包装の残骸の中から、長い袖がこぼれ落ちた。

 彼の目が。

 その白いの袖の、ボタンを追う。

「そろそろ…出なさいよ」

 包装の残骸が、床に着地しきるより前に。

 絹は、最後の一発を打ち込んだ。

 じっと、シャツを見る瞳。

「それ着たら…デートくらい、してあげるわよ」

 上から目線で、絹は彼に言った。

 こんな言葉に、彼が乗ってこないのは知っている。

 だから、あえて言ったのだ。

 はっ、と。

 彼は笑った。

「それは、こっちからお断りだ…」

 そして。

 黒い服の引きこもりは──白い服の引きこもりになった。

 半歩だけ。

 彼に、陽が降り注いだ。


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