ワケあり!
Ver.京2


「私が女だから?」

 女にボディガードされるのは、お気に召さないのか。

「違う。おまえが絹だから、だ」

 揺るがない、男。

 絹を危険な目にあわせるのは、イヤだと思っているのだろう。

「オレに同行したいなら、ボディガード以外の立場を狙えよ」

 その目が、にやっと色を変える。

 絹は、軽く虚空を見た。

 ははーん。

「秘書になれ、と?」

 それはそれで、楽にボディガードを兼任できそうだ。

 絹が、いい案だと考えていたら。

「おまえ…絶対分かってるだろ」

 冷ややかなツッコミに、絹はもう一度虚空を見た。

 ああ、そっちか。

「はてさて…秘書以外になにかあったかしら」

 にっこり笑顔で、すっとぼけてみせる。

「たまーに、オレに拳を固めさせるよな、おまえ」

 引きつった笑み。

「言えないような事なら、大したことないんでしょ」

 音信不通で怪我までしてきて、偉そうな男だ。

 彼との関係は、力比べのようなもので。

 うかつに力を抜くと、一瞬で壁ぎわ行きだった。

 だから、同じだけの力で押し返さなければならない。
< 331 / 337 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop